プレゼン資料作り
「白背景黒文字」を推奨
スライドのコピーを印刷して配布するのが原則。その際,「黒背景に白文字(厳密には明度の低い背景に明度の高い文字)」では,審査する側の心象が非常に悪い。紙面が黒塗りになって,メモを取ることができないからである。まず出発点として,配布資料および論文など,白い紙に印刷する原稿に掲載するグラフや図は,「白背景黒文字」であることが鉄則となる。
これを前提に,あえて二度手間を覚悟の上でデザインに拘って「黒背景に白文字」のスライドを作るのは at your own risk の上で自由。ただし,論文に掲載したグラフや図面だけ「白背景黒文字」のまま貼り付けるのは,いかにも手抜きで興醒めであり,やるならここまで反転すべき。スライドも含めて「白背景黒文字」を推奨すると伝えているのは,one source multi use がもたらす効率性を享受するためであり,その分だけ,スライドの中身に時間を割くことができるから。
なお,原島先生は「黒背景に灰色文字」派。ただし,どんなに頼まれても絶対に配布資料を配らないというポリシーを貫かれている。真似するならここまでする覚悟が必要。
「白背景黒文字」vs「黒背景白文字」
「白背景黒文字」は,ペンで書き足したりプリンタやコピー機で簡便かつ迅速に作成できるOHP(OverHead? Projector)が源流で,対話的な議論などで使われてきた。「黒背景白文字」は,ネガを現像して作るスライド映写が源流で, 事前に現像しておく手間がかかるが写真が美しく表示されるため,医学系やアート系で重用されてきた。パワポなどは両者の流れを継いでいる。
しばしば,どちらが目に優しいという議論があるが,これは,部屋の照明条件に依存する。
手元でメモを取ったり原稿を確認できるように配慮された明るい環境では,「白背景黒文字」の方が一貫性を保つことができ,「黒背景白文字」は環境光で黒が引き締まらずデザインとして失敗。何も見えない真っ暗な部屋では,「白背景黒文字」は眩しすぎて疲れるため,「黒背景白文字」の方が目に優しい。
したがって,審査や工学系の学会発表は,一定の明るさを確保した部屋で実施されるため,一般には「白背景黒文字」が適している。一方的に語りかけ,プレゼンに集中させたいような場面では,部屋を真っ暗にする代わりに「黒背景白文字」にする方が親切。極端な言い方をすれば,「白背景黒文字」は「ご意見を賜りたく」というスタンスであり,「黒背景白文字」は「ありがたい話を聞かせてやる」というスタンス。
情報保障ガイドライン
電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループでは,福祉情報工学研究会を中心に,情報保障ガイドラインの策定を進めている。これを全て遵守するのは容易ではないが,知っておいた上でどこまで自分が配慮できるかを考えておくことが望ましい。
要点をまとめると下記。
- フォントは30ポイント以上(最低でも24ポイント)
- これは素人さん向けの表記なので混乱するところ。
- 1ポイントは1/72インチで,1インチは25.4mm,すなわち30ポイントは約10.6mm,24ポイントは約8.5mmというのが「本来の意味」。
- プロジェクタで投影する場合は大きく投影したり小さく投影したりするので,この物理的なサイズ(mm)は無意味。
- Windowsの場合,デフォルトは96DPI(dot per inch)なので,30ポイントは40pixel,24ポイントは32pixelで表示される。
- XGA(1024×768)の標準的なプロジェクタの場合は,30ポイントなら25×19文字,24ポイントなら32×24文字という画面レイアウトになる。
- 要するに,25×19文字が目安で,詰め込んでも32×24文字くらいが1枚のスライドの情報量として適切ということ。
- 細い線が含まれるフォントは使用しない
- 伝わるデザインでは,メイリオ(Windows)とヒラギノ角ゴ(Mac)がお勧めとされている。
- 自己満足に走りすぎると残念な空気,ひどいときは審査員の攻撃性に火をつけることになるので要注意。
- 最低でも,明朝体やセリフ体(Timesなど)は避けるべき。
- 色度や彩度ではなく,明度の差(コントラスト)をはっきりさせる
- モノクロで印刷して読めなくなったらアウト。
- 色覚障害への配慮
- 「白と黄」「青と黒」「赤と緑」「黄と青」は区別がつき難い可能性ありと書かれているが,すべての障害に同時に対応しようとするとモノクロになってしまう。
- 「白(青+緑+赤)と黄(緑+赤)」と「青(青)と黒(―)」が区別できないの は,要するに青に弱いということ。正常色覚者でも青錐体の数は少ないので,この組み合わせは一般的に分かり難く,最も避けるべき。
- 「赤と緑」は,日本人男性約4.5%が,区別に難儀する(先天赤緑色覚異常)。拘るなら配慮すべきというレベル。
- 「黄と青」の区別が困難なのは数万人に一人(青黄色覚異常)。藤色(淡い青)と黄土色(濃い黄色)の組合せを避けるなど,明度のコントラストで差別化できる。ここまで配慮するのは神のレベル。
- ふりがな付けて
- 「なえむら たけし」とふりがなをつけることも…